J-CLIL第20回例会
6月27日(土)にオンラインで行われました、第20回例会の報告です。
日時:2020年6月27日(土)午後2時~5時 場所:オンライン(Zoomミーティング)
<発表1>CLILにおけるTranslanguagingの効果的活用とは?(in Japanese)
鯉渕健太郎(横浜女学院中学高等学校)
科目内容を外国語で教え、生徒の思考力や地球市民的価値観を養成するCLILというアプローチはその高い教育的意義から注目を集めている。しかし、その一方生徒の目標言語能力が十分でない場合、これらの目標を高いレベルで達成するのは容易なことではない。本発表ではCLILにおけるTranslanguaging(戦略的な母語使用)の役割をいくつかの実践事例を交えて紹介した。特にTranslanguagingを単なる足場掛けとしてだけでなく、生徒の学びをより豊かに、そして最大化するためのヒントを探ることができた。母語の使用は外国語教育において、否定的で極力避けるべきという考えも根強く残るが、Translanguaging は生徒の母語をリソース、アイデンティティ、そしてユニークな武器として捉える。今後このTranslanguagingの効果的活用により、様々な側面においてより豊かなCLILの学びが展開されることを期待したい。
<発表2>初習言語のクラスでのCLILの実践の試み(in Japanese)
廣康好美(上智大学)
大学での初習言語のクラスは、英語や日本語のクラスとは違う種類の問題点を抱えている。主に外国語以外を専攻している学生を対象にするため、最初から高いモティベーションも持っている学生は少なく、授業時間も限られている上に、授業外で学習した言語を使う機会は決して多くない。そのため今も文法訳読を中心の授業を行っている教員の数は少なくない。こういった中で、学生のモティベーションを上げるために「内容」を教え、また短い時間を有効に活用するためにDUAL FOCUSである、CLILを取り入れることはできないだろうか。学習した言語を使う機会を授業内に設けようとするCLILの手法を初習言語のクラスに取り入れる意義とその方法を考察する。
<発表3>日本語CLIL授業におけるディスカッションの分析 −思考の深化に着目して−(in Japanese)
奥野由紀子(東京都立大学)、元田静(東海大学)
本発表は、CLILに基づいた日本語授業におけるディスカッションを授業実施者と観察者の視点から分析することにより、4Cの中の特に「思考」がどのように深まっているのか、その過程を明らかにするものである。「Poverty:貧困からの脱却」を内容としたディスカッションは、参加者が用いたキーワードをきっかけとして進み、トランス・ランゲ―ジングを経て、さらに深まっていることがわかった。また授業実施者は、ディスカッションの中で「言い換え」「説明」「応答」「しかけ」などを利用して、思考を深める足場かけをしていた。可視化されにくい参加者の思考の深化過程を明らかにすることで、CLIL授業での深い学びを実現させるための手掛かりを提示した。